2017年10月7日土曜日

秋の愉しみ

秋の愉しみ、と言っても食べ物の話ではありません。昨年、私が舞台監督として定期演奏会をお手伝いさせていただいた三友合唱団との再会です。私の音楽の仕事仲間であり、食道楽の友人でもあるバリトンの北村哲朗先生が指揮をされているこの合唱団は、昭和21年創立という歴史ある合唱団です。たまたま北村先生とのご縁で舞台監督を引き受けたのですが、1959年に行われた第2回定期演奏会に私の父、八木原良太郎がテノールのソリストとして共演していたことが分かり、あまりの縁の不思議さに驚きを禁じ得ませんでした。息子としてこの合唱団のお手伝いをすることは大変な名誉なこと。精一杯務めさせていただきました。おかげさまで団の皆様からもご信頼いただき今年の再登板となった次第です。10月14日の演奏会を前に打合せに伺った稽古場である秋葉原の教会では、最後の仕上げの真っ最中。人生の諸先輩がたの歌声はじつに尊く、そして温かく響きます。もちろん北村先生は、丁寧に粘り強く、少しでも演奏の質を上げるべく熱の入った指導をされていました。ここにも実り多い芸術の秋の姿がありました。
57回目の定期演奏会

芸術の高みに向けて

2017年9月30日土曜日

一期一会


半世紀を過ぎた私の年齢のせいでしょうか。最近、次々と大切に感じていたお店や食べ物が消えていく目にあっています。家の近所で子供のころから親しんでいた肉屋が店を閉じたのは、たしか4年前。焼き豚や鳥唐揚げが美味しくて、私の家でご飯を食べたことのある人はたぶん皆、その味を知っているはず。幸い、その肉屋さんの家は近所にあって、学校給食への卸しを続けているので、個人的にお願いして何とかルートは今も確保できています。ところがその肉屋の隣にあった魚屋がこの8月、突然店を閉めたのです。連日シャッターが閉まっているので夏休みかなと思っていたら、店の前に張り紙が。「店主の急病により閉店します。長らくのご愛顧ありがとうございました。」旬の魚や珍しい刺身、塩辛や氷頭なますも旨かったし、地物の蛤の味もこの魚屋で教えてもらいました。何の前触れもなく、毎日あると思っていたものがなくなる寂しさ。鮪の刺身をおまけしてくれた優しいオヤジさんの笑顔にはもう二度と会えないのです。食べることが好きで、食べることを縁に繋がった人たちが好きだった私にとって、とても辛い出来事でした。そしてさらにこの9月、追い打ちをかけるように、お気に入りの店から残念な知らせが届きました。昨年8月、旅行で訪れた本州四国を結ぶしまなみ海道の大島で偶然立ち寄った、時間の流れが止まったような古色蒼然たる味噌屋さん。ここは旨そうだという私のセンサーが働き、車を停めて、その薄暗いお店兼工場へ入ると、ピノッキオに出てくるジュゼッペ爺さんのようなお爺さんが店番をしていました。絶対当たりだ!瞬間にわかりました。良い店にはジュゼッペ爺さんがいるのです。昔、ウィーンの楽譜商ドブリンガーの古書部を初めて訪ねたときのラウアーマンさん。まさにジュゼッペ爺さんだったのです。そこの味噌は西日本特有の甘い味噌で、麹がたっぷり効いており、瀬戸内の優しい潮の味がまろやかな素晴らしい味噌でした。すっかりファンになってしまい、東京に帰ってからも現金書留!(ネット通販なんてやってないのです)でお金を送り何度か味噌を取り寄せました。ところが今回、お金を送ると、先方から電話があり、身内の不幸があり今回が最後の発送になるとのこと。ジュゼッペ爺さんが…。もう、食べられない。もう、会えない。そんな思いで胸がいっぱいになるのです。一期一会。昔、ある取材のため、私の職場にひょっこり現れた作家の阿刀田高さんが、私の手帳にこの言葉を書いてくださったのを思い出します。そんな人との出会いの積み重ねで、豊かな人生を過ごしている幸せをこんな機会に実感するのですから、人間というのは情けないものです。私が大学生の頃から通っている都内のフランス料理店が、これも最近、テレビ番組で「後継者のいない名店」として紹介されました。よく知った店の景色や料理、そしてオーナーの顔やおしゃべりが遠い存在に思えてしまって、楽しいというより当事者的に切なくなってしまいました。人生の折り返し点を過ぎ、一期一会の言葉の重みを感じる今日この頃です。

しまなみ海道 大島の田舎味噌

2017年9月14日木曜日

バッティストーニ讃

アンドレア・バッティストーニの振る「オテロ」の公演に行きました。東京フィルがこの若き才能を早くに見出したことに感謝の気持ちしかありません。演奏会形式ながら、その昔、大野和士氏がやったオペラ・コンチェルタンテのように、衣装や装置はないものの、歌手も合唱も譜面を持たず、ステージ上を結構動いて、へたな読み替え演出などよりずっと音楽の本質に触れることのできる上演でした。そして今回はメディアアーティストの真鍋大度氏が、照明を越えた流行のプロジェクション・マッピングのような映像で共演しました。映像については賛否もあるでしょうし、私自身、多少うるさいなと感じるシーンもありましたが、オペラ上演の未来に期待を感じる演出だったと思います。それにしても、やはり主役はマエストロとオーケストラでしょう。今年30歳になるこの若者がどうしてこれほどの音楽ドラマを築くことができるのか。緻密に練り上げられ、一瞬の隙もない血の通った音楽!まるで、水や空気のように自由自在に変化して、歌手や合唱ばかりか、私たち聴衆の呼吸まで支配してしまう。彼が世界のオペラハウスから引っ張りだこになるのも当然のことだと思います。オテロが死んで、最後の音が消えたとき、もう私には拍手をする気力も残されていませんでした。もうお腹いっぱい。緊張と集中でぐったりです。なのにマエストロは元気いっぱい。若いんだね、たしかに。終演後に楽屋表敬。やあ!と出迎えてくれたのは陽気なイタリア青年なのですから、本当に参ってしまいます。私の勤める新宿文化センターでは今年2月の「ヴェルディ/レクイエム」に続いて、来年3月に「オルフ/カルミナ・ブラーナ」をバッティストーニに振ってもらいます。本当に心強い仕事仲間!マエストロ、素敵な演奏会をありがとう。
凄まじく高カロリーのオテロでした

2017年8月20日日曜日

暑気払い

お盆も過ぎたあたりでと、オペレッタ劇場のピアニスト児玉ゆかりさん(我々関係者のなかでは“児玉プロ”と呼ばれています)が音頭をとってくださって、暑気払いが企画されました。暑気といっても、東京は8月に入って連続の雨という記録。涼しい夕方でしたが、飲むための理由なら何だっていいわけです(笑)。当劇場の打上げ会場、新宿の和平飯店で18時からのスタートでした。メンバーは、家田紀子さん、里中トヨコさん、清水純さん、菊地美奈さん、北澤幸さん、そして児玉プロと私。つまりディーヴァたちに囲まれてのハーレム状態。タンホイザーの気持ちがよくわかります。私もローマ詣しないといけませんね。食事もお酒も進んで、すっかりいい気分。みんなで日本のオペレッタの来し方行く末なんか、結構、熱く話し込んでしまいました。日本でオペレッタをけん引している方々は皆、男性なので、ディーヴァたちがどう感じて、どう考えていらっしゃるか。ある意味、とっても客観的に、そして愛情深く、日本のオペレッタを盛り上げたいと思っていらっしゃることに改めて感動してしまいました。本当に素晴らしい仲間たちです。
麗しのディーヴァたちに囲まれて

2017年8月18日金曜日

オペレッタ対談

オペレッタ・コンクールでお世話になった黒田晋也先生からお話があり、黒田先生が月刊音楽現代で持っていらっしゃるオペレッタ対談企画に参加させていただきました。ご一緒したのは東京オペレッタ劇場の角岳史さん。すでに雑誌は7月号として発売されましたので、ひょっとしてご覧になった方がいらっしゃるかもしれません。紙面では、角さんと私のオペレッタに関わるきっかけや、日本語唱の是非、今後の抱負など、どうしても限られた分量だけになってしまいましたが、本当はその何十倍もお話しているのですね。オフレコ話も含めて(そっちの方が赤裸々で楽しいわけですが)、たっぷり2時間近く。それぞれの立場や考え方があって、なかなか団体を一つにするのは難しいけれど、これほどオペレッタが好きという人たちなのだから、どうにかフェスティバルのような形でも一緒にできる機会があれば、きっとファンは嬉しいだろうなあと、客目線の感想を持ってしまいました。でも、いつか実現したいな…。

音楽現代7月号をご覧ください

2017年3月7日火曜日

グルメな休日


少し前のことになりますが、よーく晴れた2月のとある一日、食道楽に徹してまいりました。最初のお目当ては三島広小路にある鰻の名店「桜家」。到着は朝11時10分くらいで、少し早すぎたかなと思いきや、すでにお店は開店しており(10時55分には開いているそうです)、暖かな日の光のなかで呼ばれるのを待ちます。5分後に、警備員風のおじさんが「うなぎ、待ってるよ!」と呼んでくれて無事入店です。下足札をもらい二階の座敷に通されます。うな重は2枚(1匹)、3枚(1匹半)、4枚(2匹)から選びます。中庸を好む私は3枚を注文。さらに10分待って、主役の登場です。よく脂が乗って、口の中に運ぶとほろほろと解ける心地よさ。富士の伏流水で身も心も清らかに育った鰻君の美味なることよ!もう、あっという間に完食です。車で15分も走って、お次は沼津港。河津桜が咲き始めて、観光客がバス単位で訪れる観光スポットでもあります。駿河湾で取れる新鮮な魚介。寿司あり、丼あり、刺身あり。そこそこ腹いっぱいなのに、駿河の寿司は入るのであります。生しらす、桜えびの軍艦、鯵は刺身で、鰯の握りはおかわりしちゃいました。馴染みの魚屋で干物をお土産に購入します。朝から美しかった富士山は、午後になっても全く曇らず、一日中、美しいお姿を見せてくれました。沼津から富士吉田を経由して都留へと走ります。富士の水で淹れたコーヒーを2杯飲んで、あとは一路、東京へ。食い意地の張った初春の一日でした。

 足柄SAからの富士山
 三島広小路駅前に到着…もうすぐ鰻
 ここが名店 桜家
 神々しい見事なうな重
 沼津港からの富士山
春うららか駿河湾

2017年3月5日日曜日

ご来場ありがとうございました!


今回もおかげさまで満席の小ホール。大勢のお客様に見ていただけた幸せに包まれて無事公演を終えることができました。皆さんとの一期一会、その積み重ねが「新宿オペレッタ劇場」の宝物です。お客様と一緒に〝新宿オペレッタ劇場の歌〟を歌える愉しさ!これが私たちの劇場の醍醐味でもあります。また来年、一緒にこの歌を歌いましょう!ありがとうございました!!

 終演直後の舞台裏にて全員集合!
 放っておくとすぐにこうなる…
もちろん打ち上げは和平飯店